読み:あずさまる
性別:男 年齢:500歳程度
身長体重:156cm
作刀:平安時代中期
一人称:私
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平安時代中期に打たれた小太刀。従順で愚直、冗談や突っ込みが通じない天然極めた平安産ド天然。
…とはいうものの実際のところは、経験豊富ゆえに発想柔軟であらゆる刀遣いやあらゆる状況に幅広く対処できる便利な刀。
平安時代に作られた後戦国時代に妖刀として名を馳せ刀神として覚醒、江戸時代初期に対妖魔機関「天照」へと預けられた。天照の活動には協力的であり本人も人間をむやみに傷付けることを好まないため、特に封じられることなく400年ほど対妖魔任務をこなしてきた。妖魔の特性を見極めバディの得意不得意を踏まえて作戦内容を提示する、という優秀な補佐官っぽいこともできる。が、「お前がそれを望むのならすれば良い」という考えなので、バディが無茶をしようとしても止めないことが大半。お目付け役には向いていない。
若い女性の身なりをしているが女装家でもなく男の娘でもなくオネエでもない男神。そのため第一声(少年声)で驚かれることが多いが本人は全く気にしていない。女性の姿以外になれないため手足の末端などの実体化を省略することで生気を温存する。
【必中如矢】(ひっちゅうやのごとし)
刀身の変形や生気の操作により行う急所必中の一撃。あらゆる可能性を否定し無視し退けて急所的中を成す因果無視の必中技。そのため生気の消費量が非常に多く、一撃出すだけで遣い手は即死する。「主殺し」を厭う梓丸はこれを行うを良しとせず、この異能を一度発動する前に数日間かけて相当量の生気を貯蓄しなければならない。そして梓丸本人が「主従」関係を嫌がるので長期間バディとして活動する刀遣いはおらず、つまるところこの異能が本領を発揮することはまずない。
異能の特性上敵の急所を見破れるので、普段は「急所位置特定機」として他のバディを手伝ったり何だりしたりしていなかったりしていたら良いなと思っていたり。
「必中如矢」の名の通り、的中した後自分の力で後方へ戻ることはできず、敵の胴体に突き刺さったままとなる。一撃発動した後は遣い手が刀を腕力で引き戻さなければならないので注意。急所が深いところにあっても「急所必中」を優先するので、攻撃後に敵の胴から抜けなくなったり埋もれたりする場合もある。
この特性を生かし遠方の「急所」へと瞬間移動の如く滑空することもできるが、その速度や軌道は「矢の如し」なのであまりおすすめはしない。
”認識”に依って生気を得る。これは梓丸が妖刀となる経緯に「人の認識」が要所を占めていることから。人がそれを「主殺しの太刀」と認識しなければ、彼は妖刀として人を惑わすことも刀神として目覚めることもなかっただろう。そしてその「妖刀と認識されたから妖刀になった」異常さ故か、それともその見た目に重要な意味があるためか、外見の変形がままならない様子。
具体的には「
”梓丸”と認識されることで吸い取れる」。そこにいると気付かれればそれだけで吸い取れ、会話相手として眼中に留められたのならさらに多く吸い取れる。不可抗力なので稀に他のバディといざこざを起こすこともある様子。とはいえ量そのものは非常に少なく、生気を吸われても気付かないこともしばしば(曰く「無断で拝借しているようなものだ、支障は出さない。強いて言うならば私が己の存在を認めてもらえて嬉しくなるだけだ」とのこと)。梓丸自身も吸いすぎないよう努めているようで、長らく天照に勤務している者でも梓丸の名前や生気補充方法を知らないのは珍しくない。というわけで、本部内をうろつくことが多いのは生気補充がしやすいからという理由もあったりする。
一般人から吸い取ることのないよう、外出時は人目を避ける傾向がある。一般人相手には羽織を頭から被って顔を隠し、名乗りを避け、刀神「梓丸」だと”認識”されないようにすることが多い。このことから夜闇に紛れる方が都合が良く、長年の経験から得た抜け道等を駆使してちゃっかり無断外出していたりする。見つかれば怒られるでは済まないのだが、500年経過した今も一度も見つかっていない様子。手際が良すぎる。
生気を多く使う際は刀遣いに強く念じてもらう必要がある。柄を握り、刀身を見つめ、その重さが腕をきしませる痛みに耐え、眼前の敵へとその切っ先を突きつける様を想像する
――結末を強く願えばその分多くを吸い取られるため、がむしゃらに敵を打ち倒そうとする刀遣いは即死寸前まで生気を取られることがある。その場合は梓丸本人が異能の発動を拒否するので生還はできるが敵の隙となるため注意されたし。
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なお、梓丸が刀神として目覚めたのは戦国時代だが、いつから妖刀であったかは明らかになっていない。「人々がそれを『主殺しの太刀』と認識したから妖刀となった」とされているものの、実際のところは「梓丸に操られ主殺しを成した事例が多かったため『主殺しの太刀』という異名がついた」のかもしれない。全ては”神”のみぞ知るところである。
【主殺しの太刀】
遠い昔のことである。
とある無名の刀匠が刀を打った。その出来は素晴らしいとは言い難いものの類の見ないものだったので、友人である商人は彼にどう作ったのかと問うた。答えはすぐに返ってきた。
出かけ先で、梓の木の精から見せてもらったのだ、と。
一度見ただけで衝動が沸き起こったのだと刀匠は続けた。作らねばならぬ、己の手で、これと同じものを
――しかし濡羽色の髪を持つ年若い女性の姿をしたその精は刀匠へと告げたという。
『その刀はお前をはじめとして多くの者の運命を狂わせるだろう』
刀匠は諦めず、それどころか「一生に一度で良い、それほどの刀を打ってみたい」と刀匠は一睡もせずに作業場にこもり、梓の木の精が持っていた刀と寸分違わぬ太刀を仕上げてしまった。小太刀という刀種が世に出るより先に作り上げられたそれは、作刀の由来から「梓丸」と名付けられ、細々と人々の手に渡ったという。
時は流れて戦国時代。
下克上の名の下に武士が力を増したその時代に、梓丸という刀はまことしやかに噂されるようになった。曰く、その刀の作り手含め代々の持ち主の多くが他者によって殺害されている、と。やがてその話は「梓丸は持ち主を殺す」話へと、そして「梓丸は持ち主の主君を仕留める」伝説へと変貌し、天下を望む武士達の間で「縁起が良い」とされた。益荒男が扱うには小振りなそれを巡って奪い合いが勃発、あやかしに魅せられたが如く彼らは揃ってその小太刀で持ち主の首を刎ね、梓丸を強奪した。
江戸時代が始まる頃には「妖刀」として忌み恐れられ、かの小太刀は由緒正しく霊験あらたかな神社に奉納された。その神社の神主は対妖魔機関「天照」と縁があり、「何らかのお役に立ちましょう」と梓丸をかの機関へと預けた。なお、「封印するのが面倒だからそっちで処置しちゃってくださいな。何ならこき使ってやっても良いよ。ほら、この子にも良い経験になるかもしれないじゃん?」という伝言があったとか何とか、今はもはや定かではない。
――現代よりも遥かに遠い未来、世界の理を守る者の手によってとある黒髪の娘と縁を結ぶことになるが、それはまた別の話。