短編集
41. TwitterSS 5編 (1/1)

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【四季折々、君と共に】



花が散る
花が散る
春の兆しを名乗り出た
薄桃色の花が散る
君はそれへと手を伸ばし
引き留めんと花弁を掬い
青の空へと掲げ上げ
白の雲は高々と
猛き自らを膨らます
風が吹く
風が吹く
木々の葉揺らす風が吹く
焦げた木の葉が落ちる先
白が降り
白が降り
あちらへこちらへ白が降り
君の足元覆っては
君の足跡って
君歩む
君歩む
君が向かう先の丘
日差しの下で枝が伸び
花が咲く
花が咲く
春の兆しを名乗り出た
薄桃色の花が咲く


解説

2021年07月20日作成

 声に出して読みたい作品。
 萩原朔太郎さんの「月に吠える」収録の「竹」という詩がアニメの中で朗読されたのが衝撃的な美しさで、「これが詩か!」と今更ながらハッと気付いた良い思い出。これは読み上げるというよりは歌うことを意識した作品です。詠う、の字の方が適切かな? あと私、四季を順繰りに書くの好きよね。


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【早夏】



夏ですね、とあなたが言うものだから
わたしは思わず「そうですね」なんて返してしまったの
いいえ、あなた、夏はまだよ
蝉の声、アスファルトの熱気、青い空
風鈴の音、ラムネの泡、線香の匂い
どれもまだ遠い、夏というより晩春の夕暮れ
あなたが戻ってくるにはまだ、早すぎる

なら、そうね
普段よりも長く
わたしの元にいてくれるかしら
久し振りのあなた


解説

2021年07月20日作成

 早とちりなところは相変わらずなのね。
 夏のお話です。お盆。とはいえ時期的にはまだお盆ではないので、こういうお話になりました。たまには早く帰ってきても良いよね。その分長く一緒にいられるのだから。


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【変わらぬ星の並びなら】



 星の並びは人の運命を示していると云います。
「なら、今のこの並びは何を表しているんだろうね」
 貴方が笑いながら点滴針のついた腕を上げて天井を指差すので、私は「そうですね」と返しました。
「きっと素敵な明日を描いているのでしょう」
 プラネタリウムの星空にそれほどの意味が含まれているかはわからないけれど。
 きっとそうに違いないと、素敵な今日を過ごした私は信じています。


解説

2021年08月07日作成

 明日もきっと、今日と同じ運勢のはず。
 TwitterのTLで星に関するお話がたくさん書かれていたのでこっそり便乗していました。
 星を見て行う占いはありますが、プラネタリウムだとどういう運勢が記録されているんだろうかと思って。模倣した空があるはずなので、どこかの日の運勢を示す星の並びが記録されていることになるんでしょう。
 この作品、タイトルが秀逸だと自負しています。変わらぬ星の並びなら、あなたとの日々は毎日同じほどに素敵なものということでしょう。


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【無題】



あなたの好きな本は何ですか
あなたの好きな物語は何ですか
世の中には把握しきれないほどの物語が
本として、紙として、立体として、映像として、
いろんな形で存在するけれど
私が書いた物語
数多くの手段の中から文字と日本語を選んだ
私の作った物語は
届いていますが。見えていますか。それとも
物語とも思われていないのでしょうか
いつも気にはなるけれど
好きと無関心はその人その人の自由だから
せめて私の
言葉が、意味が、時間が、人物が、
あなたの自由の形を保つ一部になっていたら良いなと思うのです


解説

2021年08月06日作成

 おてがみかいた
 よまずにたべた
 しかたがないので
 おてがみかいた
 なんども、なんどでも
 あなたにとどくまで
 Twitterで作品書いていると時々なんてものじゃなく頻繁に「何で誰もいいねくれないんや!」って思います。いつもゼロってわけじゃないけど、フォロワー数に対して少なすぎるとか、他の人の方がたくさんもらっているとか、そういうことが気になって気になって苛々することがあります。でもそれって思うのは普通だとしても口に出しちゃいけないよね、という自戒。良いと思ったものに人は「いいね」と言うし感想を言うのだし、その人が何を好きかとかどのくらい好きだったら感想を伝えるかとかはその人の自由であって欲しい。強制したい気持ちはあるけれどそれはいかんよねっていう。
 この手の話をすると一部の人の心をひん曲げるので作品という形にしました。一方的な感情論もこういう風に芸術に変えられるから創作って良いよね。


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【殉死】



 君の膝に義足を嵌めるように、僕の肩に太い腕を取り付けよう。翼はらない。足も太くして、君を抱えて走れる僕になろう。
 僕が君の足になる。歩けなかった君を海へ連れて行く。君の指の上で聞いた「一緒に海を見よう」という約束の通りに。
 燃える箱の中、冷たい君の頬に嘴を擦り寄せて僕は目を閉じた。


解説

2021年08月23日作成

 君とならどこにでも行ける。何にだってなれる。
 鳥になって空を飛ぼう、というのはよくあるので、鳥が人になるのを夢見る系にしてみました。種族を超えた愛というか、愛に種族は関係ないようなお話は好きというより私の中で普通です。私にとっての「愛」がそういう定義なんだと思います。限定的じゃないというか。
 この鳥はきっとご遺体から全然離れなかったんだろうなと思います。もしくは棺の中に入っていたことに誰も気付かなかったか…140字に収める練習で書いた作品だけどもう少し字数かけて描写してあげても良いかもしれない。でも、何にしろこの鳥の愛は変わらないので、140字だろうが何万字だろうが彼(彼女)にとってはどうでも良さそうです。


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Why, let the strucken deer go weep,
The hart ungallèd play:
For some must watch, while some must sleep;
Thus runs the world away.


(c) 2014 Kei