短編集
40. TwitterSS 6編 (1/1)

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【春を見る】



春を見る
空には桜の花びらが舞い落ちて
地では土色の雪が残る

夏を見る
海にサーフボードが波と添い
山では蝉が鳴き叫ぶ

秋を見る
木々に赤黄の葉が落ちて
道には銀杏の実が並ぶ

冬を見る
風に粉雪が交じり舞い
どこかへ飛び行く白鳥が鳴く


解説

2019年10月作成

 創作関係何も思いつかないできない時に苦し紛れにようやく書いたものがメモ帳に残っていたんでした。この数行を書くだけで数時間費やしたしこれ以上何も書けなかった記憶。
 私にとっての各季節の印象がわかる…かと思いきや語呂とかを優先したのでそうでもない。でも春の雪と夏の蝉と冬の白鳥は私の中に固定された印象ですね。秋の銀杏は当時勤めていた会社の周りにイチョウの木が生えていたから。一年半くらい後に書いた「四季折々、君と共に」の方は語呂を考えた上で私の四季に対する印象をばっちり書けているので成長比較としてどうぞ。


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【心の死んだ国に生きた君】



 君があまりにも優しく笑うから、僕は言いかけた言葉を飲み込んだんだ。
「こんな国、捨ておけば良いのに」
 きっと君もわかってる。けれど君はやはり剣を取るのだろう。
 いつかこの命が奪われるというのなら、味方から投げ込まれた石にではなく敵から投げつけられた槍に殺されたいから、と。


解説

2021年04月29日作成

 君の優しさは君を殺す。
 Twitterのタグで「君があまりにも優しく笑うからの続きをみんながどう書くのか見てみたい」というのがあったので。
 切ない系、それも死に自ら向かうような、そうしなければいけない状況に追い込まれて自身もそれを受け入れた上で一人向かうような、そういうシーンを思い浮かべてこうなりました。何とも言えないワンシーンです。


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【死なば諸共】



 手を伸ばす先なんてどうでも良かった。ただ助けて欲しかっただけ、ただ救われたかっただけ、ただ認められたかっただけで、ただ必要とされたかっただけ。
 なのに君は私の手を握り返しもしない。引っ張り上げもしないし縋り付いても来ない。
「腕一本じゃお互い痛くなるだろ」
 私の体を両腕で抱きかかえて、君は耳元で明るく笑った。
「これなら、俺もあんたも痛くならない」
 馬鹿だなあ、君は。
 これじゃ、何かあっても二人もろとも落っこちるじゃないか。


解説

2021年05月03日作成

 そこまで望んじゃいなかったのにな。
 Twitterのタグで「手を伸ばす先なんてどうでもよかったの続きをみんながどう書くのか見てみたい」というのがあったので。
 どうでもよかった、と言うほど投げやりで必死ならそれを丸ごと全部救ってあげたくてこうなりました。当時ファーストフォリオっていう自宅アイドルっ子二人組を練っていたので、二人をイメージしたお話でもあります。ちなみに「私」がレイで「君」がナズナ。逆ではなく、初めからそういう想定でこの二人を練っていました。
 我ながら最初と最後で話の印象というか光景が変わる良い構成で書けたと思っています。自信作。


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【世界が始まる日】



 世界が終わる日、なんて言葉は珍しくもないけれど。
「世界が始まる日、何をする?」
 そんなことを君は身を乗り出してねてくる。
「世界が始まる日、何を準備して始まりを迎えようか?」
「準備、ってそりゃ」
 ため息一つ、ガムテープで閉じられた段ボール箱にカッターの歯を入れながら大きく吐き出す。
「新居だろ。ほら、早く片付け進めて。その箱、皿入ってるから気を付けてな」
「はあい」
 カーテンとカーペットだけが定番の位置にある簡素な部屋、俺達の新しい世界が始まる。


解説

2021年06月20日作成

 楽しみだね、なんて君と笑い合った。
 「世界が終わる」系のはよく見聞きするけど「世界が始まる」系はなかなかないなあ、と思って書いてみました。140字に収めるつもりがそうはいかなかったという。
 以前「世界が終わる」系を書いていたんですが(TwitterSS 6編)あっちは悲劇的でこっちは喜劇的になりましたね。


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【いつか君が散るときは】



いつか君が芽吹いたら
 その芽を手のひらで覆い守りましょう

朝露の中、君が葉を伸ばしたら
 その背をこの手で支えましょう

青空の下、君がようやく咲いたなら
 そのほほえみを眺めて夜を迎えましょう

そしていつか君は散る
 そのときわたしは泣きましょう
 泣いて、花弁を拾い集めて、
 瓶に詰めて飾りましょう

いつか君にまた会えるよう
 君の残した種を植えましょう

だから、いつか、いつの日か、
 わたしに再び会いに来てください。


解説

2021年07月14日作成

 はなやかな君にもう一度会うために。
 ちょっと抽象的な詩。詩と呼べるかはわからないけれど。
 以前まで詩はさっぱりわけわかめだったんですが、Twitterのフォロワーさんやアニメで詩を朗読するシーンがあったりしてちょっとずつリズムというか形態がわかってきました。そういう芸術分野なのね、っていう。現代美術も最初は何が良いのかさっぱりわからなかったし、芸術感覚って触れて解説を聞いて見方そのものを知らないと魅力が理解できないものですね。
 ちなみに「いつかあなたが散るときは」っていうお話もあったりする。「いつか君が散るときは」というキーワードは定期的に頭をよぎるので今後も何かしら書くかもしれない。


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【願いは叶わないけれど】



 夏の星空は綺麗だと君は言うけれど、僕にはどうしても昼間の日差しに照らされる塵にしか見えなかった。それを君に言うと「風情がない」なんて怒られるわけで、けれどそんなやり取りも嫌じゃなくて。
 また君とくだらない喧嘩をしたいな、なんて星に願っても、何万光年先の塵の塊がそれを叶えてくれるわけもない。だけど君が好んだ星空を見上げる理由になるのなら――こんな夜も、悪くない気がする。


解説

2021年07月18日作成

 僕にはやっぱり塵にしか見えないよ、って言ってやるさ。
 Twitterのタグで「君・星・願で文を作ると好みがわかる」というのがあったので。好みがわかるというのなら好みをぶち込みましょうということでこうなりました。  他の方のはやっぱりけっこう「星に願う」系でしたね。なのでちょっと捻って、「星に願わない」系にしてみました。このくらいが好き。星のお話では「あの星を指差して」も好きです。奇跡も良いかもしれないけれど、物理的でしかない現実の中に優しい光景を見出すのが好きですね。


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Why, let the strucken deer go weep,
The hart ungallèd play:
For some must watch, while some must sleep;
Thus runs the world away.


(c) 2014 Kei