短編集
5. TwitterSS 6編 (1/1)

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【そして明日はやってこない】



 もしも明日が死んだらどうする? と君に訊いてみた。ちょっとした悪戯だ、もしも明日世界が終わるとしたら今日は何をするか。君はきょとんと僕を見る。
「明日が来ないのなら明後日が来るんじゃない?」
「何だよそれ」
 笑い合う。なら僕は、終わりを認めない君の為に、君が死ぬ明日を殺してみせよう。


解説

2019年09月30日作成

 創作お題bot@理想幻論さん(@asama_sousaku)のお題「もしも明日が死んだなら」より。
 明日が死ぬ、ということの意味を考えてこうなった記憶があるようなないような…明日が死ぬ→明日が来ない→明日が来ないようにする、ということで。彼女は明日死んでしまう。彼女はそれを受け入れない。だから僕は明日が一生来ないようにするんだ。
 ちょっと「僕」の思考が暴走気味ですね。彼女が本当に終わりを認めていないかどうかは彼女にしかわかりません。


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【窓の向こうの貴方へ】



 貴方を見た時から、私は目が離せなくなったのです。窓枠の向こう、見下ろした先で歩いていた貴方が、まるで名前を呼ばれたかのように顔を上げたあの瞬間から、私は貴方を見つめていたのです。
 私は貴方を見つめたまま、貴方の方へと身を乗り出して、そうしたら私の足は元々の約束通りに床を蹴り出します。私の手も私との約束通り、私を窓の向こうへと押し出します。
 ああ、私は貴方を一生好くのでしょう。貴方も私を一生忘れないのでしょう。そんなことを思いながら、私は貴方を見つめたまま落ちていくのです。


解説

2020年11月01日作成

お題bot*さん(@0daib0t)のお題「たぶん私、あなたが好きよ きっと一生、あなたが好き」より。
 そろそろ一次創作リハビリしなきゃな~と思ってどうにかこうにかお題を探してやっと書けそうなのを見つけてうんうん考えながらぽつぽつ書き上げたもの。これだけで数千字書いた気分だった。
 お題そのものが執着っぽかったのでそういう系にしました。こう、窓から身投げする瞬間みたいなね…そういう刹那的なの好きです。「貴方」はこの瞬間の「私」の眼差しを一生忘れないんだろうな。


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【異世界の到来】



 雀が鳴く。車のエンジン音が近付いてはすぐさま遠のく。時計の秒針が一秒ごとに硬い音を立てる。
 目蓋を開ける。白い天井を見つける。カーテンが透け、部屋の中に明暗が生じていることを知る。
 ああそうか、夜が終わったのだ。
 また、二十四時間の見知らぬ異世界が始まろうとしている。


解説

2020年11月01日作成

 創作お題bot@理想幻論さん(@asama_sousaku)のお題「こんにちは異世界」より。
 毎日が違う異世界のような、見慣れない光景と目まぐるしい日々。ちょっと息苦しくていつも気を張ってしまうような日々。眠れないまま明るくなってきた天井を見上げつつ時計の秒針の音を聞きつつ書いたものなのでちょっと散文詩的。


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【どうか届きますように】



 赤い服の貴方へ
 風には冷えた雪の匂いが混じり、先日は白鳥が夜空を飛んでいく声が聞こえました。貴方の日も近いようです。
 どうか、どうか、もう一度、私に会いに来てくれませんか。私は大人になってしまったけれど、貴方がくれた鉢植えがようやく花を咲かせました。貴方にそれを見て欲しいのです。


解説

2020年12月09日作成

 monokakiさん(@monokaki_jp)の「サンタさんへのお手紙を書いてみてください」というツイートに触発されて。
 ちょっとストーリーに思いを馳せるようなお手紙にしました。大人になってから伝えたいことってあると思うんです。


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【春夏秋冬】



 春は新しいことを覚え夏は一人で仕事を抱え秋は繁忙期というものを見、といつも目の前のことばかりだった。きっと一年に一度、今だけなのだ。モミの木を求め赤布を纏う人々と同じものを見るのは。
 ベルの音が聞こえてくる。顔を上げる。白い息に気付き、空を駆ける何かを見つける。
 ――私は冬を見た。


解説

2020年12月17日作成

 monokakiさん(@monokaki_jp)の「クリスマスムードを感じさせる一文を」というツイートを受けて。
 とはいえあまりクリスマスって感じではない。こうやって時間の流れを感じさせる文体? 技法? けっこう好きだったりする。読んでいると頭の中や体が一気にたくさんの時間を経たような感覚になりません? ならない? そっかー…


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【ホワイト・ハピネス】



 君が初めて泣いた日を覚えている。君が初めて笑った時も、僕を初めて呼んでくれた時も、喧嘩も送迎も、部活でスタメンに選ばれた時も、その喜びをハイタッチで分かち合った時も。
 そして今日、君の初めてのウェディングドレス姿を見ている。おめでとう、これからも僕に君の初めてをたくさん見せてね。


解説

2021年02月27日作成

 創作お題bot@理想幻論さん(@asama_sousaku)のお題「君の初めてを全てください」より。
 お題からして恋愛系な気がしたんですがそこはあえて愛情系にしてみました。味変。ちょっと塩味。
 でももうちょい最後の一文から恋愛要素抜けたらよかったかなとも思う…まだちょっと違う雰囲気残ってるよね…うーん難し。


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Why, let the strucken deer go weep,
The hart ungallèd play:
For some must watch, while some must sleep;
Thus runs the world away.


(c) 2014 Kei